刈払い機のクラッチの交換について

刈払い機のクラッチの交換について

今回は刈払い機のクラッチ交換について詳しく解説していきます。クラッチは草刈機の動力伝達に非常に重要なパーツで、適切にメンテナンスしないと作業効率が落ちたり、故障の原因にもなります。今回の記事では、クラッチ交換のタイミングから必要な工具、実際の交換手順、注意点までをわかりやすく説明します。工具さえ揃えば初心者の方でも挑戦できる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。

クラッチ交換のタイミングと必要な工具

まずはクラッチ交換を検討すべきタイミングについて説明します。大きく分けると、主に次の2つのパターンがあります。

  1. エンジン始動時に刃が回ってしまう場合
    通常、エンジンをかける際にスターターを引っ張ってエンジンを始動しますが、この時に草刈りの刃が一緒に回ってしまってはいけません。もし刃が回ってしまう場合は、クラッチが破損しており、破損したクラッチ板がクラッチドラムに引っかかっている可能性が高いです。このような症状が見られたら、すぐにクラッチ交換が必要です。
  2. 草刈り中に刃が滑る、力が伝わらない場合
    エンジンは正常に吹けているのに刃が滑ってしまい、普段よりも草が刈れないと感じる時はクラッチが摩耗している可能性があります。特に刈りにくい草や枯れ草の時にこの症状が出やすいです。こうした場合もクラッチの摩耗を確認し、交換を検討しましょう。

この2つが主なクラッチ交換のサインです。交換作業に必要な工具は以下の通りです。

  • 新品クラッチ(交換用パーツ)
  • ドライバー(部品外し用)
  • 14mmのメガネレンチ
  • ピストンストッパー(専用工具)
  • パーツクリーナー
  • リチウムグリス(通常のグリスでOK)

ピストンストッパーはシリンダー内のピストンを固定するための専用工具で、これがないとクラッチのネジを緩めることができません。専用工具の購入が難しい場合の代替方法も後ほど説明します。

必要な工具と新品クラッチの紹介

クラッチ交換の準備と分解手順

クラッチ交換はエンジンカバーやハウジングを外すところから始まります。作業を始める前に安全に注意し、エンジンが冷えていることを確認してください。

エンジンカバーの取り外し

まず、エンジンカバーを外します。後ろ側と前側にネジがありますので、それぞれをドライバーやレンチで外しましょう。プラグキャップも外す必要がありますが、この時はスプリングが伸びないように回しながら丁寧に取り外してください。

エンジンカバーのネジを外す様子

ハウジングとエンジンの分離

次に、ハウジング(刈払い機の刃が取り付けられる部分)とエンジン本体を分離させます。4か所のネジを外していきます。動画では見やすくするためにスイッチ配線やアクセルワイヤーを事前に外して完全分離していますが、実際は完全に分離しなくてもクラッチ交換可能です。

ハウジングとエンジンのネジを外す

ネジを外したら軽く揺らしてクラッチの位置を確認します。これでクラッチ交換の準備が整いました。

プラグの取り外し

交換作業をスムーズに行うためにプラグレンチでプラグも外しておきます。プラグを外すことでエンジン内部の動きが止まり、クラッチを回す際に作業がしやすくなります。

プラグレンチでプラグを外す

クラッチの取り外しと注意点

クラッチはフライホイールに固定されており、そのネジを外す際にフライホイールごと回ってしまうため、ピストンストッパーを使ってピストンを固定しながら作業します。

ピストンストッパーの使い方

ピストンストッパーはプラグ穴からシリンダー内に差し込み、ピストンの頭を固定するための工具です。これを使うことでクラッチのネジを緩めることができます。鉄や木の棒を代用するとピストンに傷がつき故障の原因になるため、専用工具の使用を強くおすすめします。

ピストンストッパーをプラグ穴から差し込む様子

クラッチのネジを外す

ピストンストッパーでピストンを固定した状態で、14mmのメガネレンチを使ってクラッチのネジを半時計回りに回して外します。ネジが外れたらクラッチとフライホイールを取り外しましょう。

この時、クラッチには2枚のワッシャーが付いています。紛失しないように注意してください。ワッシャーの向きも重要なので、交換時にしっかり確認しましょう。

外したクラッチとワッシャーの確認

クラッチの摩耗状態と新品クラッチの特徴

外したクラッチを見てみると、摩耗が進んでいるものはクラッチの摩擦部分(シュ)がほとんどなくなっていることがあります。摩耗が進むと鉄部分が直接刈払い機の刃に影響し、刃の滑りや回転不良を引き起こします。

摩耗が激しい場合はクラッチドラムも傷んでいる可能性があるため、ドラムの交換も検討が必要です。

新品のクラッチは摩擦部分がしっかりあり、約23mmの厚みがあります。これが正常な状態の目安です。

新品と摩耗したクラッチの比較

クラッチの取り付け準備と注意点

新品クラッチを取り付ける前に、ネジ類やワッシャーに付着したクラッチの摩耗粉やゴミをパーツクリーナーで綺麗に洗浄してください。汚れが付着したまま取り付けると、締め付け不良や動作不良の原因になります。

パーツクリーナーでネジやワッシャーを洗浄

また、フライホイール側のネジ穴部分もできるだけ綺麗に汚れを取り除きましょう。これでスムーズな取り付けが可能になります。

クラッチの表裏の見分け方

クラッチには表裏があります。表側には「KSK」などのロゴと回転方向を示す矢印が刻印されています。裏側には何も刻印がないため、矢印がある方を表として取り付けます。

クラッチの表裏の見分け方

ネジとワッシャーの順番とグリス塗布

クラッチ取り付け時のボルトには2種類のワッシャーがあります。波打った形状のウェーブワッシャーが上に、平らな平ワッシャーが下に来るのが正しい順番です。向きはどちらでも問題ありません。

ネジのクラッチ接触面とネジ部分には薄くリチウムグリスを塗布します。ただし塗りすぎると、クラッチ回転時にグリスが飛び散り滑りの原因になるため、薄く塗るのがポイントです。

ウェーブワッシャーと平ワッシャーの順番

新品クラッチの取り付けと増し締め作業

クラッチを手で軽く締めた後、再びピストンストッパーを使ってフライホイールを固定し、14mmメガネレンチでしっかり増し締めします。ピストンストッパーを使わずに締めるとクラッチやフライホイールが回ってしまい締め付けができません。

増し締め時に注意したいのが、スターターの存在です。逆回転で増し締めしようとするとスターターが引っかかりピストンがロックできません。この場合はスターターを外して作業するか、スターターを引っ張ってロック状態を作ってから行います。

スターターを引っ張りピストンをロックする

ロックできたらスターターロープをどこかに引っ掛けて戻らないようにしておき、増し締め作業を行います。これでクラッチの取り付けは完了です。

工具がない場合の代替方法と注意点

ピストンストッパーなどの専用工具がない場合でも、一般的な工具でクラッチ交換が可能です。ただし、自己責任で行う必要があり、次のような注意点があります。

  • 使用工具はインパクトドライバー(14mmビット)とポンププライヤー
  • クラッチが回らないようにポンププライヤーでしっかり押さえながらインパクトでネジを緩める
  • 取り付け時も手で閉まるところまで締めてからインパクトを使い、ネジがズレていないか確認しながら締める
  • インパクトの締め過ぎに注意。強く締めすぎるとネジが切れて破損する恐れがあるため、軽いショック(パリパリ音)程度で締めること

実際にこの方法でクラッチ交換を行うこともありますが、ネジが緩むことはほとんどなく、逆に強く締めすぎてネジを破損する事故が多いので十分注意してください。

クラッチドラムの清掃と組み付け

クラッチと接触するクラッチドラムの内壁には油分やクラッチの摩耗粉が付着しています。これらをパーツクリーナーでしっかり洗浄し、汚れを取り除きましょう。汚れが残るとクラッチの滑りや動作不良の原因になります。

洗浄後はエンジンとハウジングを元の位置に戻し、外したネジを対角線順に締めていきます。これにより均等に締め付けができ、機械の歪みを防げます。

エンジンカバーの取り付けと作業完了

最後にエンジンカバーを元の位置に取り付け、ネジを締めたらクラッチ交換作業は完了です。これで正常に動作するか確認しましょう。

まとめ:クラッチ交換は工具さえあれば簡単にできるメンテナンス

今回ご紹介した刈払い機のクラッチ交換は、工具さえ揃えば初心者の方でも挑戦できるメンテナンス作業です。クラッチの状態を正しく見極め、交換時期を逃さずに適切にメンテナンスすることで、草刈機の性能を長く保つことができます。

特に、エンジン始動時に刃が回ってしまったり、草刈り中に刃が滑るなどの症状が出た場合はクラッチの摩耗や破損が原因のことが多いため、一度クラッチの状態を点検してみてください。

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刈払い機のメンテナンスは安全第一で行い、わからない点があれば専門のショップやサービスに相談することをおすすめします。この記事が皆さんの草刈機メンテナンスの一助になれば幸いです。

ご覧いただきありがとうございました。

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