エンジンがかからない時、まず何を確認すればよいか迷うことはありませんか。ここでは、実際の修理現場で行っている原因追究の流れと、よく使う工具、イグニッションコイル交換の手順、注意点をプロのメカニック目線でわかりやすくまとめました。セルフメンテナンスの参考にも、修理を外注する際の判断材料にもなる内容です。
最初に押さえるべき診断の流れ
エンジンが始動しない原因は大きく分けて燃料系と点火系(火花)のどちらか、もしくはその両方にあります。まずは簡単で確実な順番で絞り込むことが肝心です。
- プラグの火花確認(点火系の入口)
- 燃料フィルターや燃料の状態チェック(燃料系)
- スイッチの通電チェック(止めスイッチ/オン・オフ)
- イグニッションコイル(コイル)の検査・交換
この順で確認すれば、無駄な分解を減らして短時間で原因を特定しやすくなります。
チェックリスト(診断時に使う道具)
- プラグレンチ、マイナスドライバー
- 点火テスター(点火確認用。視認性の良いテスターが便利)
- シックネスゲージ(隙間調整用。目安は0.4〜0.5mm)
- ソケット・ドライバー類、軽いハンマー(ノックピンを外すときに振動を与える)
点火テスターは電子点火(デジマグ)仕様の機種では特に有効です。プラグだけで火花の有無を見分けると見えにくいことがあるため、テスターで確実に判断すると作業がスムーズになります。

具体的な診断手順:プラグからスイッチ、コイルへ
まずはプラグで火花が飛んでいるか確認します。プラグをエンジンに取り付けた状態で、シリンダーなど金属部分にアースしてからキックして火花の有無を確認します。火花が確認できない場合はプラグ自体を新品に交換して再検査します。

新品プラグに交換しても火花が確認できない場合、点火系のどこか(スイッチかコイル)が原因の可能性が高くなります。次に燃料系(燃料フィルターや燃料の腐敗)を簡単に確認し、問題なければスイッチとコイルの順で絞り込みます。

止めスイッチの確認方法
スイッチの配線を外して、導通があるかどうかを確認します。スイッチをオンにした状態で導通がない、オフにした時に接続があるのが正常な動作です。テストの際は配線クリップや簡易テスターで感覚的に確認すると早いです。

スイッチが正常であれば、コイル側が怪しいと判断します。ここからは分解してコイルの取り外しへ進みます。
イグニッションコイルの取り外しと交換手順
コイル交換は見た目以上に簡単にできる作業ですが、いくつかのポイントを押さえておかないとあとでトラブルの元になります。以下は実作業の流れと注意点です。
- パイプ(ロングシャフト)を取り外すと作業性が上がります。
- プラグキャップは指だけで抜くと内部のスプリングが伸びることがあるので、マイナスドライバーなどで軽く持ち上げながら抜く。
- エンジンカバー後方やスタータ周りのネジを外してカバーを取り外す。
- ハウジングを外す(ネジ4本)。外すとクラッチやフライホイール、コイルが見えます。
- コイルはネジ2本で固定。外す際に背面のプラスチック製カラー(スペーサー)を無くさないよう注意。

このプラスチックカラーは機種によって形や有無が違いますが、基本的に付いている前提で扱うと紛失や組み付けミスを防げます。カラーを落として失くすと再調整が面倒になるので保管を徹底してください。

新しいコイルの取り付けとギャップ調整
コイルは軽めにネジを締めた状態で、フライホイール(ローター)磁石に合わせてシックネスゲージ(0.4〜0.5mm)を挟んで隙間を設定します。名刺やハガキを代用する場合は厚さが合うか確認してから使います。名刺は近年薄いので2枚重ねや折り曲げて厚みを出すと代用可能です。

隙間をゲージで確認したら、フライホイールが動かないように押さえつつネジを本締めします。ネジを強く締めすぎるとプラスチック製のカラーが割れることがあるため注意してください。締め付けはほどほどに、ホイールが軽く動く程度までに留めるのがコツです。
組み付け時の細かい注意点
組み付けは分解の逆順で行いますが、いくつかの注意ポイントがあります。
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配線溝に配線を正しくはめる:配線が綺麗にはまった感触(スコンと入る感じ)があれば正解です。引っかかりがあると後で配線が切れたり、カバーが閉まらなかったりします。
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エンジンカバーのネジの長さに注意:前側が短く後ろ側が長いのが一般的です。ネジを間違えて使うと、コイルに当たって穴が開いたり圧迫してコイルが再び故障する恐れがあります。
- プラグは手でねじ込んでから工具で締める。新品プラグは入りにくいので軽く振って位置を合わせると入りやすくなります。
- パイプ取り付け時はスプライン(噛み合わせ)を回しながら合わせるとスムーズに入ります。
動作確認と最終テスト
組み上げ後は点火テスターで火花を確認し、実際に始動テストを行います。点火テスターは視認性が良く、パチパチと音が出て白い光で火花を確認しやすいタイプが使いやすいです。

始動時は周囲に十分注意して、スロットルは軽く吹かす程度で確認します。ストップスイッチが正しく動作するかどうかも必ず確認してください。ストップスイッチの配線や導通をチェックしておけば、エンジンが勝手に止まらない/止まらないといったトラブルを回避できます。

コイルが悪かったという判断になりました。
それでも始動しない場合に考えられる追加原因
今回のケースはコイル不良で解決しましたが、以下のような複合的な原因が発生することもあります。
- キャブレターの詰まりや燃料供給不良
- エンジン内部の焼き付きや圧縮低下
- イグニッション系と燃料系の両方が同時に不調
高額な修理やエンジン内部に関わる作業が必要な場合は、一度見積もりを出してから作業に入るのが安全です。部品交換だけでは治らないケースもあるため、症状に応じた柔軟な対応が重要です。
修理を依頼する際の目安とサービス利用のコツ
近くに修理してくれる店がない場合や、自分で直すのが不安なときは専門店に預けるのが確実です。修理を依頼する前に以下を確認しておくとスムーズです。
- 症状の詳細(いつ、どのように止まったか、最後に交換した部品など)を明確に伝える
- 可能なら写真や簡単な動画で不具合箇所を送ると診断が早くなる
- 郵送修理の場合は見積もりの流れや送料、返送方法を事前に確認する
修理で預ける際は一度分解を行うこともあるため、部品や作業内容についての見積もりをもらい、納得してから作業着手してもらうと安心です。
まとめ:迅速な原因追究とちょっとした工夫が修理を早める
エンジンがかからないときの基本は、プラグ→燃料→スイッチ→コイルの順で確実に絞り込むことです。点火テスターやシックネスゲージなどの道具を使うことで診断精度が上がり、無駄な部品交換を減らせます。
作業時はプラスチックのカラーの紛失やネジの位置違いなどの細かいポイントに注意してください。これらは小さなミスでも後で大きなトラブルにつながることがあります。
最後に、セルフメンテナンスが難しい場合や遠方で修理店が無い場合は、預かり修理のサービスを利用するのもひとつの選択肢です。見積もりを受けて納得したうえで作業を依頼すれば安心して修理を任せられます。
安全に気をつけて作業を行い、困ったときは遠慮なくプロに相談してください。